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ドキュメンタリートウキョウとは

力ずくでつかむとポロポロと崩れ落ちてしまうもの。
追えば追うほど、自分の影法師のように、実は後ろからついてくるもの。
日々の暮らしの中では、当たり前すぎて口に出すのも憚れるようなもの。
それが、トウキョウの正体なのかもしれない。
外国人の目や写真家のファインダーには確実に映るのであるから、
トウキョウはちゃんとあるのだろう。
だが、そのトウキョウは、はたして映画のフィルムに感光するのだろうか。

佐藤真 著『日常という名の鏡』(凱風社刊)より抜粋

映画作品や著作を通してドキュメンタリーが持つ批評性に切り込み、後進の指導にも熱心に取り組んだ映画作家、故・佐藤真。
佐藤真に影響を受けた次世代の映画作家である奥谷洋一郎が、彼の遺したドキュメンタリー企画「トウキョウ」に着想を得て、その一編として制作された本作は映画『トウキョウ』への入り口になると共に、一つの独立した作品として奥谷自身の都市に生きる人たちに向けた視点に貫かれた作品に仕上がっている。

ストーリー

ソレイユと共に暮らす老人と犬の物語 多摩川の河口、捨てられた船で暮らす一人の老人 犬を傍らに、時折カメラに向かって話しかける いつしかカメラは、彼の物語を紡ぎ始める

東京・多摩川の東京湾に流れ出る河口、モーターボートの修理をしながら、捨てられた船で暮らす一人の老人がいた。
いつも犬を傍らに、川岸で近所に住む人達と語らっていた。
老人はその犬をソレイユと呼んでいた。
ソレイユとはフランス語で太陽。ソレイユを家族のように慈しむ老人の姿を映し出すカメラ。その老人は時折カメラに向かって話しかけるようになっていく。東京の片隅に暮らす老人と犬たちを見つめるまなざしは、いつしか、忘れられた東京という街の記憶とも重なっていくのだった。

私は野良犬を探していた。東京をモチーフにした映画を撮るために。

image 小学生だった頃、窓からぼんやり外を眺めているとふいに野良犬が校庭に迷い込み、教室にいた私たちは大騒ぎになった。いま私が東京で野良犬を見かけることはほとんどない。東京湾に浮かぶ羽田空港の滑走路に野良犬が迷い込んだと聞きつけ、私は湾に流れ出る多摩川の河口の街へ向かった。そこで出会った人たち。漁師は、もうとっくにこの海の漁業権は放棄してしまったと言った。産業廃棄物処理場を営む在日朝鮮人は、ゴミは宝の山だと言った。空き缶を集めるため自転車で走り回っていた肌の浅黒い男は、いまは1キロあたり105円が相場だと言った。彼らが騒ぎになった犬たちの飼い主を教えてくれた。飼い主の男は犬と一緒に廃船に住み、船の修理をして暮らしていた。彼は修理代の代わりに漁師からもらった、売り物にならない魚をさばいてその日の食事にした。
捨てる者と拾う者。私たちはみな都市に住みつく犬。雑種で野良。そしてこの東京に生きている。

奥谷洋一郎

作品情報

  • 山形国際ドキュメンタリー映画祭2011 アジア千波万波部門 特別賞 受賞
  • フランス シネマ・デュ・レエル2012 新人コンペティション部門出品
  • なら国際映画祭2012 新人コンペティション部門出品

ソレイユのこどもたち

  • 監督・撮影・録音・編集:奥谷洋一郎
  • 整音:黄永昌
  • 制作協力:映画美学校ドキュメンタリー・コース研究科 江波戸遊土 遠藤協 風姫 筒井武文 畠山容平 Love Art Puff
  • 取材協力:徳山四郎
  • 宣伝協力:石井トミイ 久保田桂子 佐藤杏奈 シネトニウム 松久朋加 百石企画 吉田孝行 吉本伸彦 渡辺賢一

Copyright(c) 2012 Yoichiro Okutani All Right Reserved
2012/日本/カラー/デジタル/104分
配給:スリーピン

コメント

この作品はただ、多摩川の水上に暮らす老人と犬の世界に過ぎないのかもしれない。
しかし興味深いことに私たちは、ほぼ2時間の現実の時間を、陰翳と静けさを湛えた東京の川べりで、
そこに起こる微細な動きに寄り添いながら過ごすうちに、時間という大きな命題を思索するよう誘われるのである。 山形国際ドキュメンタリー映画祭2011 アジア千波万波 審査員評
審査員:陳俊志(ミッキー・チェン)、瀬々敬久

奥谷さんのトーキョウのドキュメンタリーに共感します。
みなさんも観てください。
ホンマタカシ(写真家)

カントクプロフィール

奥谷洋一郎監督

1978年、岐阜県中津川市生まれ。東京育ち。慶應義塾大学文学部卒業。
映画美学校ドキュメンタリー・コース研究科修了。映画作家の佐藤真、筒井武文に師事。
大学生の時に出会った見世物小屋一座、大寅興行社との交流のなかで
初の長編ドキュメンタリー映画『ニッポンの、みせものやさん』を制作し、
2013年に初の劇場公開作品として上映、その10年にわたる見世物小屋一座との
交流が注目され多くの観客を集めた。
『ソレイユのこどもたち』はドキュメンタリー映画作家・佐藤真の遺した企画、
ドキュメンタリー映画『トウキョウ』の一編として発想し制作された。

2011年 『ニッポンの、みせものやさん』
ドイツ ニッポンコネクション 2013 出品作品
(2012年に整音したバージョンを制作し、劇場公開)
2012年 『ソレイユのこどもたち』
(2012年に音響と編集を新たにしたバージョンを制作)
山形国際ドキュメンタリー映画祭2011 アジア千波万波部門 特別賞
フランス シネマ・デュ・レエル2012 新人コンペティション部門出品
なら国際映画祭2012 新人コンペティション部門出品

劇場情報

エリア 劇場名 電話番号 公開日
トウキョウト新宿区 K's Cinema 03-3352-2471 2013年7月20日(土)~8月2日(金) 2週間限定レイトショー
オオサカフ大阪市西区 シネヌーヴォ 06-6582-1416 2013年8月31日(土)~
ナゴヤシ千種区 名古屋シネマテーク 052-733-3959 2013年9月14日(土)~9月20日(金)
コウベシ中央区 神戸・元町映画館 078-366-2636 2013年11月上映
キョウトフ南区 京都みなみ会館 075-661-3993 2013年9月21日(土)~10月4日(金)
トウキョウト世田谷区 下高井戸シネマ 03-3328-1008 2014年4月25日(金)

お問い合わせ

スリーピン:dokutani.films@gmail.com